統合報告書は、IR資料と何が違うのか
統合報告書について、「IR資料と何が違うのか分からない」という声を聞くことがある。
実際、財務情報や業績説明が中心になっている統合報告書も少なくない。
しかし、本来、統合報告書とIR資料は役割が異なる。
IR資料は、主として
・足元の業績
・中期的な見通し
・市場環境への対応
を、分かりやすく伝えることを目的としている。
投資判断を支えるための、いわば「現在地の説明」である。
一方、統合報告書に求められているのは、
なぜこの企業が中長期的に価値を創出できるのか
という構造の説明である。
そのためには、
・事業モデル
・競争優位の源泉
・非財務要素と財務成果の関係
が、一貫した文脈で示されている必要がある。
問題は、統合報告書がIR資料の延長として作られてしまう場合である。
この場合、情報は整理されていても、
「この企業でなければならない理由」
が見えにくくなる。
統合報告書の役割は、情報を追加することではない。
財務情報と非財務情報を並べて示すことでもない。
それらを通じて、企業価値がどのように生み出されているかを説明することにある。
統合報告書がIR資料と同じ語り方をしてしまえば、評価もまたIR資料と同じ水準にとどまる。
違いを生むのは、情報量ではなく、語る視点である。
※本ブログでは、非財務情報開示と企業価値の関係について、研究と実務の両面から整理していきます。
