非財務情報を「測る」ことの限界

非財務情報開示をめぐっては、「測定できなければ評価できない」という考え方が広く共有されている。
そのため、人的資本や環境対応についても、可能な限り数値化しようとする動きが強まっている。

数値化は重要である。
少なくとも、測ろうとしない情報は評価の対象になりにくい。
この点に異論はない。

しかし、非財務情報を測れば評価できると考えてしまうと、別の問題が生じる。

第一に、非財務KPIは測定方法や前提条件によって大きく変わる。
同じ「エンゲージメント」や「研修時間」であっても、その意味するところは企業ごとに異なる。

第二に、数値化された瞬間に、文脈が失われやすい
なぜその指標を選んだのか。
どの事業にとって重要なのか。
この説明がなければ、数値だけが独り歩きする。

第三に、測定可能なものだけが重視され、本来重要だが測りにくい要素が軽視される危険がある。
企業文化や意思決定の質といった要素は、企業価値に大きく影響するにもかかわらず、単純な指標にはなりにくい。

非財務情報開示において重要なのは、
「測るか、測らないか」
ではない。
何を、なぜ、どのように測るのかである。

数値はあくまで手段であり、目的ではない。
非財務情報が企業価値評価に結びつくためには、数値と文脈が一体として示される必要がある。


※本ブログでは、非財務情報開示と企業価値の関係について、研究と実務の両面から整理していきます。