「書けば評価される」という誤解
統合報告書やサステナビリティ情報について、実務の現場でよく耳にする言葉がある。
「ここまで丁寧に書いているのだから、きっと評価されるはずだ」。
この感覚は自然だと思う。
時間とコストをかけ、内容を充実させている以上、何らかの形で報われてほしいと考えるのは当然である。
しかし、企業価値評価の視点から見ると、「書いていること」と「評価されること」は同義ではない。
投資家が企業を評価する際に見ているのは、情報量そのものではなく、
・将来の収益力にどう関係するのか
・他社と比べて優位性があるのか
・継続的に再現されるのか
といった点である。
そのため、いくら情報が多くても、
「なぜそれが企業価値につながるのか」
「どの程度の影響を持つのか」
が示されていなければ、評価には使いにくい。
非財務情報開示において陥りがちな誤解は、
開示の努力=市場評価
と無意識に結びつけてしまうことである。
だが、企業価値評価は努力を測るものではなく、成果と見通しを比較する行為である。
ここにギャップが生じる限り、「書いているのに評価されない」という違和感は解消されない。
重要なのは、どれだけ書いたかではない。
何が、どのように評価に使われる形で書かれているかである。
※当面、本ブログでは、非財務情報開示と企業価値の関係について、研究と実務の両面から整理していきます。
