統合報告における価値創造ストーリー開示の有効性 ―価値創造モデルの有無と開示量に着目した探索的分析―

このたび、日本大学大学院総合社会情報研究科紀要に論文が掲載されました。

本研究では、2024年度および2025年度に統合報告書を公表した東証上場企業のうち、時価総額の大きい企業15社を対象として、価値創造ストーリー開示の特徴を探索的に分析しました。

特に注目したのは、

  • 価値創造モデル図の有無

  • 価値創造ストーリーの開示量(文章量)

  • 企業価値指標との関係

です。

主な結果

分析の結果、興味深い点が明らかになりました。

  • 価値創造モデル図を掲載している企業が、必ずしも高い企業価値を示すとは限らない

  • むしろ、モデル図を掲載していない企業において、文章による詳細な価値創造ストーリー開示と高い企業価値が同時に観察されるケースが存在する

このことは、

「価値創造モデル図を掲載すれば企業価値が高まる」

という単純な理解が必ずしも妥当ではないことを示唆しています。

また、「可視化(図表)」と「情報量(文章)」は必ずしも補完的に機能するわけではなく、企業ごとの編集方針や開示戦略に応じて、代替的に用いられている可能性も確認されました。

統合報告における価値創造ストーリーは、単なる形式的要件ではなく、企業が市場とどのように対話しようとしているかを反映する“表現手段”であると言えるでしょう。

本研究の位置づけ

本研究は探索的分析であり、サンプルも限定的です。しかしながら、統合報告書における価値創造ストーリー開示の多様な実態を明らかにするとともに、

  • 価値創造モデル図の有無と企業価値との関係を一方向的に捉えることの限界

を示した点に意義があると考えています。

今後に向けて

本研究は、非財務情報開示と企業価値の関係を探究する研究プロジェクトの一環です。

今後は、

  • サンプル拡大

  • 定量分析の精緻化

  • ナラティブ分析の導入

などを通じて、査読誌での発展的研究へと展開していく予定です。

論文情報

タイトル:
「統合報告における価値創造ストーリー開示の有効性
―価値創造モデルの有無と開示量に着目した探索的分析―」

掲載誌:
日本大学大学院総合社会情報研究科紀要

本文はこちら:
https://gssc.dld.nihon-u.ac.jp/wp-content/uploads/journal/pdf26/26-069-075-Fukuda.pdf