非財務情報開示と企業価値――なぜ「書いても評価されない」のか
近年、統合報告書やサステナビリティ開示を通じて、非財務情報を積極的に発信する企業は増えている。
人的資本、環境対応、ガバナンスなど、開示内容も年々充実してきた。
一方で、こうした取り組みが企業価値の向上に結びついているかという点については、違和感を持つ場面も多い。
「これだけ書いているのに、市場の評価は変わらない」
この声は、決して珍しくない。
この違和感の背景には、非財務情報開示そのものの善し悪しではなく、評価との接続の弱さがある。
これまで整理してきたポイントをまとめると、主に次の点に集約される。
第一に、非財務情報やKPIが、経営戦略や収益モデルと十分に結びついていないケースが多い。
活動内容は示されていても、それがどのように競争優位や将来のキャッシュフローにつながるのかが見えにくい。
第二に、価値創造ストーリーが語られていても、検証可能な形になっていないことがある。
方向性は理解できても、進捗や成果を確認できなければ、評価には使われにくい。
第三に、比較可能性の問題である。
指標の定義が変わったり、過去や他社との比較ができなかったりすると、情報は判断材料になりにくい。
さらに、非財務情報を「測る」こと自体にも限界がある。
数値化は重要だが、測れることと評価できることは同義ではない。
重要なのは、その数値が何を意味し、どのように企業価値の説明に使われているかである。
では、非財務情報は本当に企業価値に効かないのだろうか。
答えは否である。
実際には、非財務情報が企業価値評価と結びついている企業も存在する。
そうした企業に共通しているのは、
・経営戦略との明確なつながり
・投資家が評価に使える形での説明
・情報の選択と集中
という点である。
非財務情報開示は、姿勢を示すためのものではない。
企業価値を説明し、理解してもらうための評価との対話である。
今後問われるのは、「どれだけ書いたか」ではなく、
「何が、どのように評価されているか」
という視点だろう。
