比較できない開示は、なぜ評価できないのか

非財務情報開示では、「自社らしさ」や「独自性」が重視されることが多い。
事業内容や戦略が異なる以上、開示も画一的である必要はない、という考え方はもっともである。

しかし、企業価値評価の視点から見ると、比較できない情報は評価しにくいという現実がある。

投資家が企業を評価する際の出発点は、常に比較である。
同業他社と比べてどうか。
過去の自社と比べて改善しているのか。
この比較ができて初めて、情報は判断材料となる。

ところが非財務情報開示では、
・指標の定義が年度ごとに変わる
・算定範囲が明示されていない
・前年との連続性が確保されていない
といったケースも少なくない。

この場合、開示内容がどれほど丁寧でも、投資家は比較のしようがない
結果として、「読まれてはいるが、評価には使われていない」状態が生じる。

比較可能性を確保することは、独自性を捨てることではない。
むしろ、比較できる土台があるからこそ、違いが際立つ

非財務情報開示が企業価値評価に結びつくためには、
何を独自に語り、
何を共通の尺度で示すのか、
この整理が欠かせない。

評価される開示とは、情報量の多さではなく、比較と検証が可能な構造を持つ開示である。

比較できないと機関投資家は投資先の銘柄選択の対象に入ってくるのは難しい。


※本ブログでは、非財務情報開示と企業価値の関係について、研究と実務の両面から整理していきます。